2022年6月4日(前編)
阿武隈山地南部には、竹貫変成岩と、そこに貫入した花崗岩体が複数あり、複雑な地質をしています。特に石川町付近ではペグマタイトが発達し、鉱物産地として有名ですね。
今回は、竹貫変成岩の探査をしていた際に偶然発見した、柘榴石を含む花崗岩を、改めて詳しく調べてみました。
鉄礬柘榴石 Almandine
Fe3Al2Si3O12
文字通りザクロを思わせる、深紅でツヤのあるつぶつぶの皆さん。手作業で花崗岩を粉砕して、1個づつ取り出しました。暇人か?
たくさん集めると、見栄えしますね
母岩はこんな感じ。
山ノ尾産を思わせる結晶ですが、ほとんど雲母を伴わない点が異なります。
地質図にも載らないレベルの小規模な花崗岩であるため、どの貫入岩体に属するかは不明。というか本当に貫入岩かどうかも不明
鉄電気石 Schorl
NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
ごく小規模なペグマタイト脈は幾つか認められたが、標本価値のあるモノは無さそう。
脈中心部には、時おり電気石が現れる。
2022年5月28日
群馬県みどり市、草木ダム周囲に分布する、花崗閃緑岩質のマグマ(いわゆる沢入岩体)は、基盤の古生層の岩石(泥岩やチャートなどの堆積岩類)に広い範囲で接触変成作用をもたらしました。
冷え固まったマグマは石材に、接触変成を受けた岩石にはマンガン鉱床が、かつて資源として利用されてきました。
今回は、マグマ本体ではなく、接触変成で生じた鉱物たちを探しに行ってきました。
パイロファン石 Pyrophanite
MnTiO3
去年のクリスマスに、山中の凍った坂道で車がスタックしかけて、泣きながら下車した時に偶然見つけた鉱山産。
みどり市に数ある変成マンガン鉱床でも、最もマグマ(花崗閃緑岩)に近い鉱床のひとつ。
そのためか、マグマからもたらされた(とされている)チタンの鉱物が頻繁にみられます。
マンガン重石も似たような感じで出ますが、結晶形が明瞭でないと区別困難と思います。
紅柱石 Andalusite
Al2SiO5
暗灰色四角柱状結晶。一般には赤色系統の色が多いですが、母岩由来の炭質物(というか石墨)の影響で、ほとんど黒に見えます
母岩はホルンフェルス。変成岩あるあるですが、新鮮なものは馬鹿げた堅さ。
ちなみに、マンガンを含むものは鮮やかな緑色を呈し、ビリディンと呼ばれます。
この地域にはマンガン鉱床が山ほどあるので、元素だけ見れば揃う環境も存在しそうですが、今のところビリディンは片麻岩からしか見つかっていないそうです。
菫青石 Cordierite
Mg2Al4Si5O18
ホルンフェルスに斑状で現れる、ガラス光沢のある部分は、だいたいコイツ。
単体では無色のはずだけど、雲母や炭質物や硫化物が混在するためか、見た目にはほとんど黒に見える事が多いです。
なお、分解が進んだものは雲母に置換されるため逆に真っ白で、桜石とか呼ばれる
まれに青みを帯びた斑状部分も見かけるけど、ガラス光沢を失ってるものは、既に雲母化していると思った方が良いです。
2022年5月21日(後編)
前回に引き続き、釜石鉱山の石です。
今回は鉱石として利用されない鉱物たち。
幻の釜石石Kamaishiliteを得たい気持ちもありましたが、短い制限時間の中で挑むのは危険過ぎたため、手を出しませんでした。
釜石鉱山では、硼素(B)を含む鉱物が結構あって、この記事の鉱物は全て硼素を含むものを掲載しました。一応組成式も書いてますので、その辺も見てやってください
なお今回採集したズリは、ほとんどが新山鉱床から排出された石との事です。
フォンセン石 Vonsenite
Fe3BO5
あぁ~!硼素の音ォ〜!!
これを採りに来た。釜石まで。
黒色線維状結晶の集合で、大変地味だけど、産地はかなり限られる鉱物なのですよ。
全体像。地味すぎんだろ…
ズリに転がされてたせいか、円磨されてるのが若干気になるけど、まあいいでしょう。
鉄電気石 Schorl
NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
変質したひん岩(安山岩質の半深成岩)に、黒色脈状~スポット状で産するようです。言われないと電気石とは思わないですね。
ペグマタイトに現れるタイプ2022年5月15日 2ヶ所目(後編) - 野山にまじりて、石を割る。とは、全く様子が異なります。
鉄斧石 Axinite-(Fe)
Ca2FeAl2BSi4O15(OH)
緑簾石などに伴う、灰紫色部分。
正直持ち帰るか迷うレベルのグレードですが、一応釜石の名物という事で。
2022年5月21日(前編)
石と賢治のミュージアム主催のフィールドワークに参じるため、憧れの釜石鉱山に行ってきました。
釜石鉱山は鉄鉱山としては国内最強で、近代的な製鉄の祖となった地でもあります。
鉱床は、古生代の石灰岩と花崗閃緑岩の接触部に生じたスカルン鉱床で、マグマ側に鉄、石灰岩側に銅の鉱床が胚胎するそうです
フィールドワークでは、鉱床の成り立ちや鉱山の沿革など、基礎的な所からマニアックな話まで出てきて、大変勉強になりました。
今回は主力商品である、鉄と銅の鉱石を投下します。
磁鉄鉱 Magnetite
Fe3O4
組成の示す通り、主要な鉄の鉱石。画像だと赤鉄鉱っぽく見えるけど磁鉄鉱ですよ
主にスカルンのマグマ側に、柘榴石を伴って賦存するそうです。柘榴石の中に角礫状の磁鉄鉱が入ってる標本が有名ですが、なかなか良い感じのやつは見つからなかった
黄銅鉱 Chalcopyrite
CuFeS2
こちらは主要な銅の鉱石。黄鉄鉱っぽい写りですけど、ほぼ全体が黄銅鉱ですよ
主にスカルンの石灰岩側に、単斜輝石などを伴って賦存するそうです。
鉄から始まった釜石ですが、銅も相当な産額だったそう。とはいえ我がトティギ県の足尾鉱山には及ばないようですけどねッ
キューバ鉱 Cubanite
CuFe2S3
正確には「顕下でキューバ鉱が見られる可能性のある黄銅鉱」です。タイトル詐欺か?
ここのキューバ鉱は、方解石+黄銅鉱の低品位鉱のうち、黄銅鉱が白っぽくなってるような部分に多く含まれるそうです。
この石の黄銅鉱は、ほぼ黄銅鉱そのものの色だから、可能性はゼロでは無いものの、少々厳しいかもしれません。
2022年5月15日 2ヶ所目(後編)
前回の続きです
こうして見返すと、結構いろいろと得るものがありました。
タイヤ破裂させて1万失った甲斐があります。
SiO2
これは私がローズクオーツだと主張している石英の塊です。
手に取った瞬間は、凄く綺麗に見えたんですけど、改めて見るとそんなでもないな
このくだり、あと何回やるんだろうか?
鉄電気石 Schorl
NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
これだけデカいと、石炭みたいです。
結晶の真ん中に致死的な亀裂があって、触れるのも恐ろしい状態。たすけて
表面の粒状結晶はジルコン~ゼノタイム。ここでは電気石の表面にしばしば現れます。
稀元素の濃集に、硼素が関係してるのかな
イットリウムベータフェルグソン石 β-Fergusonite-(Y)
YNbO4
画像中央の黒褐色四角錐結晶。よく知りませんが、フェルグソン石の多型だそうです。
デカい黒色柱状結晶は電気石。稀元素わからんマンなので自信無かったけど、国立科博の先生に見て頂いてるので間違いないはず。
小粒だけど明瞭な結晶が見つかって良かった
2022年5月15日 2ヶ所目(前編)
こちらは別な地域。
1ヶ所目と同様に、珪長石鉱山として稼行されたヤマですが、やはり微妙に出てくる鉱物が異なります。
どうでもいいですけど、帰り道の林道でタイヤがパンクして、エライ目に遭いました
JAFとタイヤ館の方々には感謝申し上げます。
ジルコン Zircon
ZrSiO4
ここの稀元素鉱物は、電気石の結晶面に濃集する傾向があるようです。
分かりにくいですが、緑灰色~淡褐色粒状結晶のゼノタイム~ジルコンが、たくさんへばり付いてます。なかなか大粒だと思う
ゼノタイム Xenotime-(Y)
YPO4
電気石表面に、結晶の断面が現れたもの。
母岩の電気石は、風化のため脆くて、上手く剥ぐのはとても難しい。この石も、触れると電気石の粉がポロポロ落ちてきて恐ろしい
電気石の脱落した面に現れた半自形結晶。
2022年5月15日 1ヶ所目
この日はペグマタイトを2ヶ所はしご。
この地域は古くから、珪長石鉱山が多数開発されてて、ここもそのひとつ。
無限にある白い石を見てると気が遠くなるので、ペグマタイトはあまり得意ではないです。好きなんですけどね
鉄礬柘榴石 Almandine
Fe3Al2Si3O12
特に説明を要さない、柘榴石の集合。
母岩がグズグズなわりに、風化はさほど進んでないようです。キラキラして綺麗っちゃあ綺麗だけど、透過は全く無い。
時間かければ、もっと良いのが出そう
燐銅ウラン鉱 Torbernite
Cu(UO2)2(PO4)2・12H2O
茶色の汚い石を粉砕してたら出てきた。ここの石は酸化鉄で汚れてるのが多い気がします
結晶はとても小さいけど、存在すればすぐに気付く鮮やかさと思います。
透明感を失った粉っぽい部分は、メタ燐銅ウラン鉱にあたるんだろうか?
ジルコン Zircon
ZrSiO4
ベースは長石で、鉄雲母の剥離した面にびっしり付いてた。というか雲母の剥離面には、量の差はあれど、かなりの確率で付いてるっぽい。
ブツブツ系が苦手な人からしたら、ややキモチワルイかもしれないです